借地権売却後の「確定申告」完全書類チェックリスト|漏れなく節税するための準備
借地権を売却した翌年は、たとえ「3,000万円の特別控除」などを利用して納税額が0円になる場合でも、特例を適用するために確定申告が必要です。
借地権の申告は、通常の土地売買よりも「地主とのやり取り」に関する書類が多くなるのが特徴です。特に、地主に支払った「名義書換料(譲渡承諾料)」の証拠を揃えることが、大きな節税につながります。
スムーズな申告と節税のために、準備すべき書類をチェックリスト形式でまとめました。
1. 全員が必ず準備する「基本書類」
まずは、売却の全体像を証明するための書類を揃えましょう。
[ ] 譲渡時の不動産売買契約書(写し)
借地権をいくらで売ったかを証明します。
[ ] 取得時の借地契約書・売買契約書(写し)
借地権を得た時の価格(権利金など)を証明します。
※不明な場合は「売却価格の5%」を概算取得費として計算します。
[ ] 仲介手数料の領収書(売却時・購入時)
譲渡費用として利益から差し引けます。
[ ] 売却した物件の登記事項証明書(登記簿謄本)
建物の所有期間や権利関係を確認するために必要です。
2. 借地権特有の「譲渡費用」に関する書類
ここが最も重要です。地主に支払った費用は、全額「経費(譲渡費用)」として計上し、所得税を減らすことができます。
[ ] 地主への「譲渡承諾書」(写し)
地主が売却を認めたことを証明する書類です。
[ ] 名義書換料(譲渡承諾料)の領収書
地主に支払った承諾料の金額を証明します。銀行振込の場合は、振込明細の控えも併せて保管してください。
[ ] 更新料・建替承諾料の領収書
売却に際して支払った更新料や建替えに関する承諾料も、費用として認められるケースがあります。
3. 「3,000万円特別控除」などの特例を受けるための追加書類
マイホーム(居住用)としていた借地権を売り、節税特例を受ける場合に必要です。
[ ] 除票住民票(または戸籍の附票)
その場所に住んでいたことを証明するために、売却からさかのぼって住所履歴がわかるものが必要です。
[ ] 買い換えた場合の「新居の売買契約書・登記簿」
「買い換えの特例」を利用する場合に必要となります。
4. 申告手続きの際に必要な本人確認書類
[ ] マイナンバーカード
お持ちでない場合は、通知カード + 本人確認書類(運転免許証など)。
[ ] 還付金受取用の口座情報
税金が戻ってくる場合に備え、本人名義の通帳やキャッシュカードを準備します。
5. 確定申告のスケジュールと提出先
申告期間: 売却した翌年の 2月16日 〜 3月15日
提出先: 売却した物件の所在地ではなく、「現在お住まいの地域」を管轄する税務署
提出方法: 税務署へ持参、郵送、またはマイナンバーカードを使った「e-Tax(電子申告)」
まとめ:書類の「保管」が最大の節税対策
借地権の確定申告で最も多い失敗は、**「地主さんに渡したお金の領収書を失くしてしまった」**というケースです。数百万円単位の承諾料の証拠がないと、数十万円〜百万円以上の税金を余計に払うことになりかねません。
売却が決まった瞬間から、すべての領収書を一つのファイルにまとめる
古い借地契約書が見当たらない場合は、早めに不動産会社へ相談する
不安な場合は、2月に入る前に税理士や税務署の無料相談を活用する
正しい書類準備で、借地権売却の利益をしっかりと手元に残しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 領収書を紛失してしまったら、もう費用にできませんか?
A. 銀行の振込履歴や、地主との合意書(金額の記載があるもの)があれば、代わりの証拠として認められる可能性があります。諦めずに税理士へ相談しましょう。
Q. e-Taxで申告する場合、書類の提出はどうなりますか?
A. 契約書の写しなどはスキャンしてデータ送付するか、後日郵送します。一部の書類は提示を省略できますが、税務署から求められた際にいつでも出せるよう5年間は保管義務があります。
Q. 相続した借地権の場合、古い契約書がなくても大丈夫ですか?
A. 取得費が不明な場合でも申告は可能ですが、概算取得費(売却価格の5%)を適用することになり、税金が高くなる傾向があります。親御さんが保管していた古い金庫や書類入れを念入りに探す価値は十分にあります。